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“ひらめき力”を磨くヒント
常識にとらわれず、自由に発想する「ラテラルシンキング」。
ラテラルシンキングによって成功したエピソードをもとに、“ひらめき力”を身につけるコツをご紹介します。

なぜ安い? ドラッグストアで売られるカップ麺がスーパーよりもおトクな値段の理由とは……。

vol.7

医薬品より食品のほうが
目立つ場所で売られている

かぜ薬や湿布薬といった医薬品だけでなく、洗剤や歯磨き粉などの日用品、化粧品に雑貨と、さまざまなモノを売っているドラッグストア。スーパーやコンビニともそん色ない品揃えのお店も多く、とても便利ですよね。ところで、ドラッグストアの店先や入り口そばの売り場には、ドリンクやカップ麺などの食品が並んでいることにお気づきでしょうか? 「ドラッグ(薬)」を看板に掲げているのですから、本来なら医薬品を目立つ場所に置くように思いますが、かぜ薬や湿布薬は店の奥に置いてあるのが一般的です。

しかも、店先に置かれているドリンクやカップ麺は、同じブランドなのに、近くのスーパーやコンビニで売られているものに比べて値段が安いことが珍しくありません。生活費を1円でも抑えたい主婦や、お小遣いの限られたビジネスパーソンにとっては大助かりですが、なぜドラッグストアの食品はそんなに安く売れるのでしょうか?

利益のためではなく“客寄せ”のため

じつは多くのドラッグストアは、食品で儲けようとは考えていません。ドリンクやカップ麺などは原価ぎりぎりか、ものによっては赤字覚悟で販売価格を設定しているのです。

もちろん、これには意図があります。たとえ儲からなくても、スーパーやコンビニより安い値段でカップ麺を売れば、お客さんは安さに引き寄せられてドラッグストアに来店します。そして店内を回りながら、「そういえば胃腸薬が切れていたな」「寒くなってきたからかぜ薬を買っておこう」と、利益率の高い商品を“ついで買い”してくれるのです。

モノを売るなら「利益を取ってナンボ」というのが私たちに染みついた習慣です。例に挙げたドラッグストアは習慣を根底から変えて、食品については「利益を得るためのモノ」ではなく、「来店してもらう客寄せ」と習慣を変えたわけです。

このように、世の中で「こうあるべきだ」と思われている習慣を根底から疑い、違う基準に置き換えたり、新しい基準を作ってみたりすることも、ラテラルシンキングの重要なポイントだといえます。

ドラッグストアの店頭には、集客を狙いとした特売品が並ぶ

本質を突き詰めると
新しい基準が見えてくる

基準を置き換えたり、新しい基準を作ったりするためには、物事や行動の「何のために?」という“本質”を見極めることが大切です。ドラッグストアに限らず、あらゆる商売において、「何のためにモノを売るのか?」を突き詰めていくと、「そもそも、商売を続けられるように儲けを出す」という本質にたどり着きます。

たとえば同じ商売でも、ボランティア活動の一環としてモノを売る団体にとっては、利益を得ることは目的ではありません。商品を買ってもらうことによって、活動資金を確保し、周囲の協力や理解を深め「活動意義を継続的に知ってもらうこと」が主な狙いです。つまり、「利益を得ること」だけが「モノを売ること」の本質とはいい切れないわけです。

今回のドラッグストアの例に限らず、商売とは「単品で損を出しても全体で利益を出す」行為であるという本質をしっかりと見極めたうえで、従来の「利益を得るために買ってもらうモノ」(医薬品)のほかに、「直接利益を得るモノではなく来店してもらうモノ」(食品)という“新しい基準”を創り出したのだといえます。このように物事や行動の本質を突き詰めれば、今まで他に用途がないと思い込んでいたことが、いかに固定観念に縛られたものなのかが見えてきます。

本質を探り出すためには、目の前にある物事や行動を抽象化します。たとえばビジネススーツの用途なら、「ビジネスにふさわしい服」→ 抽象度を一段上げると「見苦しくない服」→ さらに抽象度を上げて「シャツの上に羽織るもの」といったように、具象から抽象へと、どんどん突き詰めることができます。そうして行き着いたところに、そもそもビジネススーツは、何をするためのものかという本質が見えてくるのです。

「シャツの上に羽織るもの」であれば、従来のビジネススーツでは当たり前の形や色、素材にとらわれる必要はありません。むしろ、スーツでなくても構わない。一見突飛なようですが、習慣の壁を取り払うことで、暑い夏にはスーツそのものを着ないというクールビズのような新しい基準が生まれるのです。

“ひらめき力”のポイント
新しい基準の作り方とは?
いままでの“習慣”を疑い、本質に立ち戻って、まっさらな状態から物事を見つめ直す

PROFILE

木村尚義きむら・なおよし
経営コンサルタント。ソフトウェア開発会社勤務、OAシステム販売会社、パソコンショップの立て直しなどを行い、外資系IT教育会社に転職。その後、創客営業研究所を設立。六本木ライブラリー、メンバーズコミュニティ個人事業研究会会長なども務める。著書に『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』など。

記事公開:2017年12月