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“ひらめき力”を磨くヒント
常識にとらわれず、自由に発想する「ラテラルシンキング」。
ラテラルシンキングによって成功したエピソードをもとに、“ひらめき力”を身につけるコツをご紹介します。

外食チェーンを展開したいけれど、
店舗賃料が高い。
安上がりに実現できる“意外な方法”とは?

vol.9

都会の繁華街で店舗を増やした
カレーチェーン店の“秘策”

居酒屋やファストフードといった外食チェーンにとっては、メニューの良し悪しはもちろん、客に来てもらいやすい店舗立地を確保できるかどうかが、売り上げを伸ばすための重要なポイントです。

しかし、好立地の物件は、すでにほかのチェーン店に押さえられていることが多く、店舗賃料も高いのが一般的。さんざん探し回ってようやくいい物件を見つけたのに、賃料が高すぎて採算が合わないということが珍しくありません。人気が高い都会の繁華街などであれば、なおさら物件探しは難しいものです。

ところが、そんな課題を逆転の発想で見事にクリアし、都会の繁華街で店舗を次々と増やしながらビジネスを拡大しているカレーチェーン店があります。さて、この会社はどうやって店舗を確保することができたのでしょうか?

その答えは、「昼間は営業していない居酒屋の店舗を借りる」です。

居酒屋は基本的に夜だけ営業するので、昼間は店舗がまるごと空いています。そこでこの会社は、居酒屋に賃料を支払って昼間の店舗を借り、ランチタイム限定でカレー店を営業するというビジネスを思いついたのです。

これなら物件探しは簡単ですし、賃料も安上がりで済みます。居酒屋にとっても、空いていた昼間の店舗を貸し出すことで賃料が入るだけでなく、昼間の利用客が夜に来店してくれるといった宣伝効果も期待できるのですから願ってもないことです。

しかも、居酒屋には厨房設備が整っているので、ほかの場所であらかじめ時間をかけて煮込んだカレーを鍋ごと持ち込んで温めれば、簡単に提供できます。オペレーション面でも非常に合理的なのです。

居酒屋の中にカレー屋が!? 日中にお休みの店舗を“間借り”してカレーを提供

いつも使わない
場所や時間をシェアリングする

今、世の中では自動車の相乗り(ライドシェア)や、民泊といったシェアリングサービスが盛んになっていますが、このカレーチェーン店がひらめいたのも、そうしたシェアリングの発想だといえます。空いている場所や時間を共有すれば、貸し手と借り手の双方に“ウィンウィン”の関係がもたらされるからです。

これをラテラルシンキングのアプローチに当てはめて解釈すれば、居酒屋やカレー店という個別具体的な業態を、「どちらも同じ飲食店」というレベルにまで抽象化できたことが、時間帯をずらすというシェアリングの発想に結び付いたのだといえます。

「新規オープンのカレー店は自分の店を持たなければならない」という店舗イメージへのこだわりが強すぎたら、居酒屋の店舗を借りて営業するという発想には至らなかったでしょう。しかし、一段抽象化して「カレー店」を、「お客さまに食事を楽しんでいただく場所」だと考えれば、カレー店も居酒屋も基本的には同じです。

おそらく、このカレーチェーン店の経営者も、店舗への固定観念を拭い去ることができたおかげで、「居酒屋は夜だけしか営業していない。昼間の空いている時間と場所を借りられるのではないか?」というアイデアがひらめいたのではないでしょうか。

このように、物事をどんどん抽象化していくと、それまで気付かなかったチャンスを発見したり、問題解決にたどり着いたりすることができるものです。

時間や場所をシェアリングして成功した例としては、このほかにも、美容室を借りてネイルサービスを提供している会社があります。

美容室を訪れる客の多くは、ネイルもしたいと思っているので、同時にサービスを受けられるのなら一石二鳥ですし、美容室にとっては、「ネイルも同時にできる」という売り物ができることで、集客アップにつながります。このように“ウィンウィン”の関係が構築できるコラボレーションは、ほかにもいろいろと考えられそうです。

ただし、飲食店つながり(カレー店と居酒屋)や、美容つながり(美容室とネイル)といった分かりやすいコラボなら相乗効果が期待できそうですが、あまりにも異なるジャンル同士を組み合わせると、客が理解に苦しむかもしれません。

“ひらめき力”のポイント
ビジネスのあり方を抽象化
していけば、異業種との
場所や時間の共有が可能になる

PROFILE

木村尚義きむら・なおよし
経営コンサルタント。ソフトウェア開発会社勤務、OAシステム販売会社、パソコンショップの立て直しなどを行い、外資系IT教育会社に転職。その後、創客営業研究所を設立。六本木ライブラリー、メンバーズコミュニティ個人事業研究会会長なども務める。著書に『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』など。

記事公開:2018年3月