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仕事がうまくいく「話し方」のコツ

ビジネスシーンで役立つ話し方のコツをケース別にご紹介します。

vol.2 会議の成果が上がらない理由と、
効果的な会議を開く秘訣とは?

会議は話し合いではなく“聞き合い”の場

長時間にわたり活発に意見が交わされた会議を終えて、一仕事終えた達成感と心地良い疲労感。しかし、冷静に振り返ると大して議論が深まらず、重要な決定は先送りに……。このような話をよく耳にします。会議は、ビジネスシーンに必要不可欠なもの。しかし、大勢の人が貴重な時間を割いているにもかかわらず、会議を開いたこと自体に満足してしまって、相応の効果を得られていないことがあります。そこで今回は、会議の効果を最大化するための法則を紹介します。

なぜ会議がうまくいかないのか? それは参加者が各自の意見を主張することに専念するあまり、他人の話を聞かず、話が平行線を辿ってしまうからです。会議で大切なのは、参加者全員が“聞き合う”という意識を持つことです。

2人だけの会話でも、お互いが好き勝手に話をすればかみ合いません。ましてや参加者が大勢いる会議で、それぞれが自分の意見ばかりを主張すれば、議論が深まるはずがありません。各参加者が、発言者の話をしっかりと聞き、真意を正しく理解し、その上で議論を進めなければ、効果的な会議にはならないのです。

話を聞くときは耳だけでなく全身で

会議中に目をつぶって腕組みをしているあなた。話を聞こうと耳に意識を集中させたり、熟考したりしているのかもしれませんが、これは会議を台無しにする絶対にやってはいけないことの一つです。人は、話をするときに真意や本音を100%言葉にすることは、ほとんどありません。会話中は、相手の表情や仕草などを見ながら、言葉に隠された考えや思いを汲み取ることが重要なのです。

2人で会話していて、相手が目をつぶって腕組みをしていたら、話す方は冷めてしまい、聞く方は話し手の真意をつかみ損ねます。会議では大勢の人を前にしているので、いろいろな事情などを考慮して、普段以上に本音を抑えて話をします。ですから会議中は耳から音を拾うだけでなく相手の動作や表情を読み取り、2人で会話するとき以上に相手をよく観察しなければいけません。“全身で”聞かなければ、居眠りしているのと同じであるだけでなく、発言者に余計なストレスを与えることになります。

情報が減少する仕組み

話し手が伝えたい真意は理性などによって遮られ、相手に伝わる情報量は減少します。減少の度合いは、話の内容やその場の状況などによって変わりますが、仮に80%に減少するとしましょう。さらにそれを言語化する際にも情報量が減少します。ここも仮に2割減少するとします。話し手は伝えたいことのうち64%しか発信できないのです。また、聞き手側も言葉に含まれる情報全てを理解できるわけではないため、聞き手が言葉から受け取れる相手の真意は51%程度に留まります。つまり話し手の本音をより正しく理解するためには、聞き手は言葉だけではなく表情や動作などを注意深く観察し、情報を補完しなければならないのです。

司会者には適性がある

会議を円滑に進めるためには、司会者がキーマンになります。司会者には、話し合いの交通整理の役割が与えられています。会議中は意見がぶつかったり、参加者同士が感情的になったりすることもあります。また、全員が考え込んでしまって、意見が全く出なくなる場合もあります。このようなときに、上手に場をなだめたり話を振ったりしながら会議を滞りなく進めるのが、司会者の役割です。

これほど重要な役割を担う司会者を、単純に役職や交代制などで決めていませんか? それは、大事なプロジェクトのリーダーを、全く関係がない部署の人間に任せるのと変わりません。司会者には、冷静さや統率力、分析力、気配りなど様々な資質が求められるのです。

これらを全て満たす人は、なかなかいません。しかし、参加者の中で最も適性の高い人物に事前に依頼して、しっかりと準備をしておいてもらうことが会議の成否を分けます。会議の場で司会者を決めるような行き当たりばったりでは、うまく進むはずのプロジェクトですら失敗してしまうかもしれません。

参加者全員がルールを守り、役割を全うする

会議の参加者にも資格がいります。議題に関連する人物だけが参加し、役職や立場などにかかわらずそれぞれの意見を対等に扱わなければいけません。若手の発言に「君は経験不足だから……」などと参加者の発言を顧みられない人は、会議に出席する資格はありません。参加者全員が、対等な立場で議論して、問題解決を図っていくことに会議の価値があるのです。後で情報を共有する手間を省くために参加させたい人がいる場合は、オブザーバーとして出席させて、意見は一切認めてはいけません。

上記のほかにも、会議には守るべきルールがあります。「時間を守る」「自説を押し付けない」「途中参加、退出はしない」などがあり、参加者全員がこれらに従って、それぞれの役割を果たすことで、会議ははじめてその効果を発揮できるのです。

会議の効果を最大化するためには、組織内で日頃からこれらの意識を共有し、トレーニングしておくことが大切です。また、会議を行うことが決まったら、議題を参加者全員で共有することはもちろん、事前に関連する資料を作って配布しておくなど、準備も必要になります。

何か問題などがあると、条件反射のように会議を行う組織もあります。しかし、重要な議題ほど入念な準備を行い、ルールに沿って、参加者全員が役割を果たさなければ会議を行っても、時間を無駄にしてしまうでしょう。

PROFILE

永田 豊志
秋田 義一あきた・よしかず
一般社団法人話力総合研究所理事長。話し方、聴き方、ビジネスコミュニケーション、人間関係等に関する研修や講演を担当。また、話力インストラクターの教育指導にあたる。国士舘大学理工学部講師(非常勤)、産業能率大学マネジメントスクール講師。霞が関ナレッジスクエアアドバイザリーメンバー。公益社団法人 日本技術士会 防災支援委員会 委員 兼 千葉県支部幹事。千葉県東葛テクノプラザ技術相談員などを歴任。

記事公開:2017年9月