本コンテンツは、お客さまがご利用のOSまたはブラウザーへ対応しておりません。
最新のOS、ブラウザーにアップデートしてください。

図解で思考整理

ビジネスマンが抱える悩みを、「図」にすることで解決します。

vol.4 PERT(パート)図を使って
遅れてはいけないポイントを洗い出す。

プロジェクトの各工程にかかる日数を見える化

人が何人も関わり、製作工程が複雑なプロジェクトは、進捗状況の把握が難しい。さらにやっかいなことに、ある工程で完成したパーツがないと、次の工程に移れないという事態が発生する場合もある。

ひとつの工程が遅れると、その遅れが雪だるま式に後に影響し、プロジェクト全体の見通しが立たなくなる。これは、絶対に避けたいことだが、残念ながらしばしば起こるので困りものだ。

そこで今回は、プロジェクト全体を把握しながら、各工程の流れと、その工程にかかる日数を図解する方法を紹介する。PERT図(Program Evaluation and Review Technique)を使った方法で、うまく使いこなせば、絶対に遅れてはいけないポイントを洗い出せるだろう。プロジェクト・リーダーであれば、覚えておいて損はないはずだ。

PERT図(別名:アローダイヤグラム)の基本形

上記はPERT図の極シンプルなモデルだ。「○」はプロジェクトの各工程にあたる。そして各工程を作業順に「→」で結び、作業の所要時間を書いておく。上の例の場合は「①」から「②」までに5日間の日数がかかると読む。「②」は「③」と「④」の工程に分かれる。「②」から「④」には3日かかり、「②」から「③」は5日かかる。「②→④」「②→③」は同時に作業を進めることができる。

ステップ1:プロジェクトの工程をPERT図の基本形に落とし込む

PERT図は、まず実際に簡単なものを作ってみるのが分かりやすい。例としては料理の作り方が良い。なぜなら料理は、いくつかの工程を、同時に進めるプロジェクトだからだ。ここでは「納豆掛けごはん」の作り方を図に起こしてみる。

■ 納豆掛けごはんを作る工程のPERT図基本形

納豆掛けごはんの作り方をPERT図にすると、3つの作業を並列して行うことが分かる。青色で示したネギの作業、緑色で示した納豆の作業、オレンジ色で示した米の作業だ。なお「①」は料理を始める前の材料がそろっている工程、「⑤」は料理ができて食べる工程だ。できれば炊きあがったばかりのごはんと納豆を食べたいので、炊きあがりと、よく練った納豆ができるタイミングを合わせたい。そこで各工程に取り掛かるベストなタイミングを割り出すためにステップ2に入る。

ステップ2:最も作業に早く取り掛かれるタイミングを割り出す

ステップ2では、各工程に最も早く取り掛かれるタイミングを割り出していく。基本的には左から右へと、時間を足していけばいい。たとえば「①」から「②」にいくには、「ネギを切る2分」がかかる。そこで「②」すなわちネギを入れる直前のタイミングは最短で「①」から2分後となる。「⑥」は「米を研ぐ10分」がかかるので10分。「⑦」はそこからさらに「米を炊く50分」を足すので60分となる。

最も作業に早く取り掛かれるタイミングを記入

ここで注意したいのが「③」だ。青色で表示したネギの作業工程でいえば、「③」は「ネギを切る2分」に「ネギを入れる0.1分」を足した2.1分になる。だが「③」は緑色で表示した納豆の作業工程でいえば「納豆を練る3分」の後の3分だ。このような場合PERT図では時間の多い方を採用する(納豆を練った後、そこにネギを入れる)ので、「③」は3分となる。

ステップ3:最も作業に遅く取り掛かれるタイミングを割り出す

次に最も作業に遅く取り掛かっても、問題ないタイミングを割り出していく。基本的には右から左へ数字を引き算していけばいい。例えば「⑤」から「④」へいくには、61.1分から0.1分を引いて61分となる。

最も作業に遅く取り掛かれるタイミングを記入

すべての「遅く取り掛かれるタイミング」を割り出したら、最後に「遅く取り掛かれるタイミング」から「早く取り掛かれるタイミング」を引き算して「余裕時間」を出す。試しに「③」を見てみよう。「③」は「早く取り掛かれるタイミング」が3分で「遅く取り掛かれるタイミング」が58分だ。これはつまり、61.1分で納豆掛けごはんを作るには、最低でも58分の時点で「③」にいないと間に合わず、早ければ3分でたどりつくこともでき、その際は後工程にかかるまで55分の余裕がある(待つことができる)ということだ。

一通り図ができたところで、余裕時間が0分のラインができることに注目しよう。「余裕がない」とは、きっかりその時間に間に合わせないと、予定通りにプロジェクトが終わらない非常に重要なラインのことだ。これを「クリティカルパス」と呼び、予定通りにスケジュールをこなすには、「クリティカルパス」をいかにこなすかがキーポイントになる。

61.1分で終わらせるためには、「⑥」が10分、「⑦」が60分でないと間に合わない。そこで「⑥」「⑦」「④」「⑤」に最も重点を置くスケジュールを作り、そのために多少融通が利く「②」「③」で調整をすれば良いと考えることができる。

この結果から、納豆掛けごはんを作るうえで最も注意すべきは、米関連の作業であることが分かった。今回は分かりやすい例として料理を使ったが、普段の仕事、新しい仕事、大きなプロジェクトに関わることになったら、PERT図を用いて、クリティカルパスを見つけて欲しい。

PROFILE

永田 豊志
永田 豊志ながた・とよし
知的生産研究家、ショーケース・ティービー共同創業者兼取締役副社長。九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。その後、出版社や版権管理会社などを経て、ショーケース・ティービーを共同設立。図解思考、フレームワーク分析などビジネスパーソンの知的生産性研究にも取り組んでおり、国内外で執筆活動や講演でそのノウハウ普及を行う。

記事公開:2017年4月