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梅佳代うめかよ

写真家

1981年生まれ。石川県出身。2002年、日本写真映像専門学校卒業。
ファースト写真集『うめめ』(2006 年)が異例のベストセラーとなり、2007年、第32 回木村伊兵衛写真賞を受賞。『男子』、『じいちゃんさま』に次ぐ2年ぶりの写真集『ウメップ』(すべてリトルモア刊)発行を記念して、東京と大阪2カ所で梅佳代写真展を開催する。

【東京】
「ウメップ:シャッターチャンス祭り in うめかよひるず」
期間:2010年8月7日(土)?22日(日)
会場:表参道ヒルズ  スペースオー(本館地下3階)

【大阪】
「ウメップ:シャッターチャンス祭り in うめかよFIVE」
期間:2010年10月2日(土)?15(金)
会場:HEP HALL

笑っている子どもと、笑っている大人 ギャップも含めて愛おしい

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─ ものすごい号泣っぷりの写真!全身で泣き叫んでいる子どもたちが写っているのに、見ているとほほえましくなってくるって、すごい写真です。

私、泣いている子どもがいると、ついつい見てしまうんです。だって、ものすごいじゃないですか。号泣している子って、ほぼ大げさで。怒っているお母さんも、泣いている子どももアピールだし、その時のお母さんとのギャップ、あれが本当におもしろくて。

─ 一人で泣いているだけですごいのに、この写真の子どもたちは集団ですね。

しかも、みんな本気で泣いているんですよ。まんなかにいるこの子の顔もいいでしょ。こんなに泣くことないですよね、大人になったら。よく見ると、後ろにおばさんがいるんですけど、これが大人の気持ちだったんです。その場に居合わせた大人は誰もがこんな顔でいた、私もこんな感じだった(笑)。

─ そのギャップが、見る人を自然と和ませる理由なのかもしれないですね。これはどういうシチュエーションだったんですか?

保育所の隣に手作りされたオバケ屋敷。入る前は「俺、全然怖くねぇし、オバケなんかおらんし」って言っていた子たちが、どうやら中にはオバケがいるらしいという情報が伝わってきたみたいで……、列の前のほうがざわつき始めたんです。瞬間、全員に伝染してムリムリという雰囲気になったら、中から「わあ」って声が聞こえてきた。そしたら、みんなみるみる顔色が変わってきて。 そんな状況なのに、「入りますよー」って先生に連れられて、中に入っていった。私も一緒に行ったたんですけど、めちゃくちゃ怖かった! 私より若い保育所の先生がオバケになってたんだけど、長い髪のかつらをかぶって、耳の下まで口を書いて、着物姿で笑って立っているんですよ(笑)。それで、子どもたちは、きゃー!って言ってパニックになって、次々と出口へ向かって行った。私は、それより先にばっと出て、待ちかまえて撮ったのがこの写真です。

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梅さんのアルバムを見ていると、写っている人が親戚や友達のような気がしてくる

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─ 梅さんは、いつでもカメラを持ち歩いているそうですが、どんなときに写真を撮りたいと思うんですか?

シャッターを押すタイミングは、写真家じゃない人と一緒。記念撮影で思い出。家族や友達が集まったとき、せっかくだから撮っておこうよって、それがほぼすべてです。ここに2002年に、私が通っていた写真学校の時に撮ったアルバムがあるんですけど…(パラパラとページをめくって友達が写っている写真を見る)、「うわー、このときカジ君はこんな髪型だったんやー」とか、「今は結婚して子どももおるけど、このときはこんなんやったんやー」とか……。今が2010年だからこそ、この2002年に撮った写真が効いてくる。写真を撮ることって、自分も含めて写っている人たちともう一回見るためのもの。写真って、もともとそのためにあると思っている。私は芸術というより、そういう気持ちで写真を撮っているので、こうして見直すと本当に懐かしい。

─ みんなリラックスした表情をしてますね。自分は全然知らない人のはずなのに、家族のように親しく感じられます。

それが私の思うところ。人の家のアルバムを見るのっておもしろくないですか? 自分と関係ないのに、あまりにも密すぎて、自分の家族や友達みたいに思えてくる。

─ いつも、こうしてアルバムを作っているんですか?

撮影したフィルムは絶対に全部焼いて、時系列に並べていく。写真の日付けは、その日だからってことで入れているんですけど、別になくてもいいんです。ただ、あったほうがその時のことを思い出せて、楽しいから好き。 今、うちには図書館のように壁一面にアルバムがあるんですけど、うちに来た人はこれを見始めると止まらなくなるんですよ。作品でもなんでもない、どうってことない日常なんだけど。

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半年~数年、時間をあけて見ると、撮った直後にはわからなかったおもしろさを発見できる

─ いい写真を撮っているときは、現像する前からわかるもの?

おもしろくなるであろうとは思うけど、長年の経験からあまり期待はしてないんですよ。現場のほうがすごすぎて、改めて見るとおもしろくないということもあるから。でも、だからこそ、それを半年後に見たらおもしろいんですよ。その時の状況を忘れているから、もっと客観的に見られる。

─ なるほど、時間をおいて見ることが重要。

そう。このアルバムの写真も久しぶりに見たらおもしろかったもん。「こんなの撮ってたんだ、この時は!」って自分のことも思い出せるし、みんなの若さもおもしろい。若さってすごいね。顔だけじゃなくて服もそうだし、やっていることも若いし、私が撮っているものも若い気がする!

─ デジカメで撮った写真をどんどん捨てていく人がいますが、梅さんは「もったいない」と言っているそうですね。

デジカメだって捨て写真はないはずなんです。特に、カメラに付いている小さいモニターだけで判断して、その場で消していくのは本当にもったいない。なんで捨ててしまうんだろう。その日は好きじゃないと思っても、時間がたつと捨てた写真のほうが良くなったりする。隠したかった写真のほうがおもしろい。それは、絶対にそうで、5年後、6年後、7年後と時間が経つとなおさらだから、写真っておもしろくて、むずかしい。

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2010/8/13 取材・文 岡田カーヤ/構成 MONKEYWORKS
写真 藤堂正寛/Webデザイン 高木二郎

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