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ArchiveNavi トップコラムものづくりの現場から [第3回]世界最高レベルの記録容量に挑戦中!磁気テープ研究開発者の熱き思いに迫る

ものづくりの現場から

[第3回]世界最高レベルの記録容量に挑戦中!
磁気テープ研究開発者の熱き思いに迫る

富士フイルム 神奈川工場 小田原サイトでは、世界最先端の技術を駆使し、磁気テープの生産を行うとともに、同サイト内にある記録メディア研究所では、さらなる記録容量の拡大を視野に次世代磁気テープの研究開発を進めることで、グローバルで高まりつつあるデータストレージの需要に一層の貢献を果たそうと奮闘しています。研究開発に携わるメンバーに、現在の活動内容やものづくりにかける思いを聞きました。

富士フイルム 記録メディア研究所 多田 稔生(左) 小沢 栄貴 (右)

富士フイルム 記録メディア研究所 多田 稔生(左) 小沢 栄貴 (右)

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あらゆる可能性を徹底的に追求

──次世代磁気テープの実現に向けて、主に取り組んでいることは?

多田:数年後をめどに、記録容量を現行製品のおよそ5倍に高めた革新的な磁気テープを実用化するため、重要な素材である磁性体の研究開発を行っています。

目標の記録容量を達成するためには、テープに塗布する磁性体の粒子サイズを現行製品レベルから30%程度小さくして、テープ単位面積当たりの粒子個数を増やす必要があります。しかし、粒子サイズが小さくなると、その分、一つひとつの磁性体粒子が磁性を維持するのが難しくなるため、粒子のサイズダウンと磁性の確保という相反する要素を両立させることが目下の課題となっています。

小沢:磁気テープは、ベースフィルム、ベースフィルム上に導電性や表面平滑性を付与する非磁性層、その上に塗布されデータを記録する磁性層、テープの走行を安定させるベースフィルム裏面のバックコート層の4層構成で、さらに、例えば磁性層は、磁性体・分散剤・結合剤・潤滑剤等の複数素材で構成されるなど、多数の要素から成り立っています。私の役割は、これらの要素の最適条件を記録再生特性の評価から見いだし、商品設計に盛り込むことです。

先ほど多田さんが説明したように、磁性体粒子が小さくなると粒子1個の磁性を維持することが難しくなりますが、それでも安定的にデータの記録を行えるように、あるべき設計指針を導き出そうと知恵を絞っているところです。

──ブレークスルーに向けて必要なことは?

多田:これまでの延長線上の取り組みだけでは、磁気テープの革新的な高容量化は難しいと感じています。単純に磁性体粒子をサイズダウンするだけでなく、その組成、形状および表面性状まで突き詰めて考え、粒子設計に反映させることで活路を見いだしたいです。

小沢:既存の磁気記録方式にとらわれず、他の方式など幅広いストレージ技術に目を向け、磁気テープに応用することがポイントと考えています。

FUJIFILMの総合力を追い風に

──研究開発における富士フイルムの強みは?

多田:磁性体づくりに欠かせない粒子形成技術は、写真フィルムにおいて光を捉える役割を持つハロゲン化銀粒子を源流とする技術。創業期から培われてきた、世界に誇れる富士フイルムのコア技術の1つであり、豊富な知見を駆使して磁性体の研究開発を行えることは大きな利点だと思います。

小沢:さらに富士フイルムには、高度な技術を持つ生産部門と、解析技術センターや有機合成化学研究所など高い専門性を持つコーポレートラボ群があり、常に連携しながら研究開発を推進できることも強みです。

多田:確かに、その点は見逃せませんね。例えば、磁気テープの高容量化を進める上で、これまで問題にならなかった微小欠陥が実害となりますが、解析技術センターの技術・知見を用いて欠陥の位置や原因を明らかにすることでスムーズに解決できる可能性が高まります。

小沢:磁性体粒子を均一に分散するための分散剤や磁性体粒子をベースフィルム上に固定するための結合剤を最適化するために、有機合成化学研究所の素材技術を応用するといった取り組みも行っているんですよ。

多田:磁気テープシステムとして性能を最大限に引き出すためには、磁気テープ側の改良はもちろんですが、磁気テープドライブ側の改良も重要となってきます。富士フイルムは、IBM社と長年にわたり共同研究を実施。毎週のように議論を重ね、記録容量の向上につながるアイデアを出し合うなど、継続的に連携を強化しています。

磁気テープの力で社会に貢献したい

──皆さんにとって研究開発のモチベーションは?今後に向けた目標は?

多田:富士フイルムというメーカーの一員として、磁気テープを通して社会の発展に貢献していきたいです。磁気テープの主役は磁性体だと思っています。その開発担当者である自分がやらないと、お客様が求めている高容量化のニーズには応えられないという気概をもって日々の研究開発に取り組んでいます。

小沢:私は、超高密度・高容量磁気テープの開発を加速させて、世界中で爆発的に増え続けている重要なデータを確実に保存できるメディアを提供することで、膨大な保存情報を未来に役立てられるようにしたいと思っています。そのために、富士フイルムで長年培われてきた磁気テープ設計技術の積み上げと、最先端の技術を融合して、これまでの技術の延長では到達し得ない超高密度・高容量磁気テープを実現したいと考えています。

多田:小沢さんのおっしゃる通り、IoT、ビッグデータ活用、AI分野が急速に発展することで、生成されるデータ量は指数関数的に増大し、10年後には1年間で今の10倍のデータが創出されると予測されています。その生成されるデータを大容量に、かつ確実に保存することは、ICT社会に必須なことと考えています。磁性体に関しては、現行製品から粒子サイズを半分以下にし、記録容量を60倍以上に引き上げられる可能性を確認しました。その可能性を実用化技術に落とし込み、モノとしてできるだけ早くお客さまにお届けしたいです。

小沢:お客さまのニーズとしては、容量だけでなく、信頼性・コスト・ビット単価も大事であり、これらを今より高い次元でバランスをとり、将来にわたって期待していただける磁気テープを開発し続けたいです。そのためには新しい材料や生産技術にも着目し、富士フイルムの持ち味を生かしながらチャレンジングな研究開発を進めていきます。

3回にわたり磁気テープの生産・研究開発の最前線を紹介しました。最新の磁気テープを活用したアーカイブサービスに興味や関心のある方は、ぜひお問い合わせください。

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