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仕事がうまくいく「話し方」のコツ

ビジネスシーンで役立つ話し方のコツをケース別にご紹介します。

vol.10 話は半分しか相手に伝わらない!?
自分の考えを正確に伝えるポイントとは?

会話の効果の決定権は相手にある

部下や後輩、協力会社に依頼した仕事が「自分の考えた通りに進まなかった……」。仕事を続ける限り、そういったことはこの先も何度でも経験することになるでしょう。もちろん相手の事情でうまくいかないこともあります。しかし、そもそも自分の考えが、相手に正確に伝わっていない可能性もあるのです。せっかく依頼したのに、それが相手に正確に伝わっていなければ、独り言と変わりません。そこで今回は、自分の考えを相手に正確に伝えるために気をつけたい話し方のポイントを紹介します。

ビジネスにおける会話の目的は、相手に自分の意思を伝え、自分の仕事を達成すること。とはいえ、自分に都合があるように相手にも都合があり、相手が理解してくれるまで無制限に話すことはできません。発言権は自分にありますが、話の効果の決定権は相手が握っています。ですから話をするときは、限られた時間の中で、できるだけ正確に自分の考えを伝える努力が必要です。

話で伝わる自分の考えは半分程度!?

自分の考えをできるだけ正確に相手に伝えるためには、まず相手がわかりやすいように話すことが重要です。自分の思いつくままに話をしても、相手はほとんど理解できません。

会話には「仕事がうまくいく「話し方」のコツ」Vol.2で述べたように“8割の法則”があります。自分の考えを100%とした場合、それを伝えようとするときに、まず内容を整理します。自分の考えを100%整理することは難しく、話す情報量は80%になります。さらに、全ての内容を完全に言語化することもできないため、情報量が64%程度に減少するのです。 また、その話を聞いた相手は、全ての真意を汲み取ることはできないため、情報量は51%程度になり、最終的に相手に伝わるのは半分程度になってしまいます。もちろん、この情報量の減少の度合いは、話の内容やその場の状況などによって変わりますが、会話の大前提として、相手は自分の考えの半分しか理解できないこともあるということを、念頭に置いておきましょう。

相手の頭にそのまま入る内容・言葉を選ぶ

自分の考えを言葉にするまでの過程で強く意識したいのが、相手が理解しやすい内容や言葉で話すこと。自分と相手では、話の前提になる情報や状況が違います。自分がわかっていることでも、必ずしも相手がそれを共有しているとは限りません。話す内容を整理するときに相手の立場に立って、それがわかりやすいかどうか確認してみると良いでしょう。

話すときの言葉選びも大切です。最近のビジネス会話では英単語を多用する傾向がありますが、中にはあまり一般的ではない単語を耳にすることもあります。また、英語か、日本語かを問わず、社内で日常的に使っている言葉でも、社外の人にはわからないものもあります。英単語や専門用語などを使うと、仕事ができそうな印象を与えられるかもしれません。しかし、そうした言葉は、相手が頭の中で別の言葉に変換して聞いている可能性があります。もしその変換が間違っていれば、結果的に誤解につながりかねません。

相手の立場や経験などによっても、使う言葉は変えなければいけません。日ごろからさまざまな人と話をして自分の語彙を増やし、そのとき話をしている相手に最も伝わりやすい言葉を選ぶように心がけましょう。ビジネスの会話では、自分が話した内容や言葉が、相手の頭にそのまま入っていくことが理想なのです。

自分の考えを相手の「聞きたいこと」でサンドする

自分がどんなに話す内容や言葉に気をつけても、相手に聞く気が無ければ自分の考えを正確に伝えることはできません。会話は、話し手と聞き手の共同作業です。成功させるためには、“相手”ではなく、話を聞く意思を持った“聞き手”にする必要があります。そのためには、自分が伝えたいことだけではなく、相手の聞きたいことも話すのが第一歩。自分の伝えたいことと相手の聞きたいことを、地層のように積み重ねながら会話を組み立てていくのです。話の内容が多岐にわたる場合は、途中でそれまでの話を簡単にまとめてみたり、相手から質問を受けたりすると、より話の効果を高めることができるでしょう。

相手を聞き手に変えるためには、他にも配慮すべきポイントが4つあります。まず表情や態度。話す内容に合わせた表情や態度は、相手が話に集中しやすい状況を作り出します。次に、ジェスチャーです。ジェスチャーは話の内容を補うだけでなく、相手の様子を見ながら効果的に使うことで、相手の目線を引きつける効果もあります。3番目のポイントが環境。話す場所は、常に自分で選べるとは限りません。しかし、例えば周囲が騒がしいときには「机を近づける」「声を大きくする」「身を乗り出す」といったことをするだけで「話をよく聞いてほしい」という自分の意思が、相手に伝わります。

最後は、服装や髪型といった身なりです。相手に不快感を与えないことは最低条件。必ずしも高級品である必要はありません。これ見よがしにブランド品を身に着けていると、相手によってはかえって悪い印象を与える場合もあります。清潔感があって、好印象を与えることができれば十分です。特に話す内容に自信があるときほど、身なりにも気を使うようにしてください。身なりが悪くて相手が聞く気を無くしてしまっては、せっかくの話が台無しになります。

相手を聞き手に変える4つのポイント


上記のことを常に意識して会話に臨むようにすれば、自分の考えがより正確に伝わるようになります。他部署で優秀だと言われていた部下や、前任者から信頼できると聞いていた協力会社が「話と違う」と思ったときは要注意。自分の考えを、相手が理解できていないのかもしれません。話し方を磨いて相手の能力を存分に引き出せば、仕事がうまくいく確率は格段にアップするはずです。

PROFILE

永田 豊志
秋田 義一あきた・よしかず
一般社団法人話力総合研究所理事長。話し方、聴き方、ビジネスコミュニケーション、人間関係等に関する研修や講演を担当。また、話力インストラクターの教育指導にあたる。国士舘大学理工学部講師(非常勤)、産業能率大学マネジメントスクール講師。霞が関ナレッジスクェアアドバイザリメンバ。公益社団法人 日本技術士会 防災支援委員会 委員 兼 千葉県支部幹事。千葉県東葛テクノプラザ技術相談員などを歴任。

記事公開:2018年10月