本コンテンツは、お客さまがご利用のOSまたはブラウザーへ対応しておりません。
最新のOS、ブラウザーにアップデートしてください。

仕事がうまくいく「話し方」のコツ

ビジネスシーンで役立つ話し方のコツをケース別にご紹介します。

vol.11 “パワハラ”と言われない
効果的な部下の叱り方とは?

管理職はいつの時代も叱り方で苦労する!?

「自分が若い頃は、上司によく叱られた。しかし、そのおかげで成長することができた」と思っている人は少なくないはず。一昔前の職場では、部下が厳しく叱責されることは日常的にありました。ところが現在は、同じようなことをすると、一歩間違えれば“パワハラ”に。とはいえ部下を育てるためには、どうしても叱らなければいけないときもあります。そこで今回は、部下を叱るときに注意すべき点や、効果的な叱り方について解説します。

部下と接するときに、まず念頭に置いておかなければいけないのは、育ってきた環境や時代背景が違うということ。長い間右肩上がりの時代に生きてきた世代と、終身雇用制が崩れ人材が流動的になっている時代に育った世代では、仕事や人間関係に対する考え方がまったく異なります。一方で、管理職に求められることは、いつの時代も変わりません。それは、自分が率いる部署の成績を上げることです。そのためには、部署のメンバーのモチベーションを常に高めておく必要があります。叱るときの前提として、相手のモチベーションを下げないということを、常に意識してください。

“叱る”と“褒める”は必ずセットで

叱る目的は、相手に何かを改めさせることです。それを達成できるのであれば、アドバイスや軽い注意でも十分です。叱ることは、効果は大きい反面、その後の人間関係に悪影響を及ぼす可能性があり、諸刃の剣だといえます。状況にもよりますが、叱る前のステップとして、なるべくアドバイスや注意を行うようにしてください。

アドバイスや注意をしたにもかかわらず改善されなければ、最後の手段として叱るのはやむを得ません。しかし、叱った後は、相手との関係がぎくしゃくしないように気を配ることが大切です。こうしたときは意識して褒めるようにしましょう。「仕事だからうまくやるのが当たり前。褒めて図に乗ると困る」という考えでは、現代のリーダーとしては失格。「今まで自分は褒められたことがないから、褒め方がわからない」という人がいるかもしれません。しかし、褒める内容は、叱ったことに関係がなくても構いません。「以前できなかったことができるようになった」「目標を達成した」など、とにかく良い評価をしてあげることが重要。叱ったときは、同時に「成長した」「よくやった」と褒めることを忘れないでください。

叱り方を間違えれば期待の部下は転職する

叱るということは、とてもエネルギーを使います。できれば叱りたくないと思っている人も多いでしょう。それでも叱るのは、部下を育てなければいけない責任感や、部下に対する愛情があるからです。一方、相手にとっても叱られることは、決して喜ばしいことではありません。どんなに責任や愛情があると言ったところで、相手には少なからず反発する感情が生まれるもの。叱る効果を最大限に高めるためには、相手の反感をいかにして抑えるかが鍵になるといっても過言ではありません。そのために意識しておきたいのが、以下の5点です。

まず、相手の自尊心を守ること。昔は期待されている人ほど人前で叱責され「叱られているうちが花」などという言葉もありました。しかし今そんなことをすれば、数カ月後には部下に転職されていてもおかしくありません。叱るときは別室に移動するなど、人目につかないような配慮が必要です。ただし相手が異性のときは、別の問題になる可能性があるので、注意してください。また、同僚など他の人と比較して叱ることも、相手を傷つけてしまいます。自分だけでなく、相手とそのときに名前を出した人の関係まで悪くしてしまう危険性があり、余計な火種を抱えることになります。

次に感情を出さないことです。人間である以上、腹が立つのは仕方がありません。しかし、それを表に出すと、上司が怒っているということだけが、相手の印象に強く残ります。当然、相手には強い反感が生まれ、叱る効果どころか、単に関係が悪化しただけということにもなりかねません。怒っていたとしても「どう話せば相手を改めさせることができるか」ということに努めて、冷静に考えるようにしましょう。

叱る効果を高める5つのポイント

本気で相手と向き合い改善策を考える

3つ目は、そのときに改めてほしいと考えている1点だけに集中して話をすることです。前述したように、上司は職務に対する責任感や部下への愛情があるからこそ叱ります。しかし、そのことを相手に伝えるのは、実はNG。相手は「それは自分の都合」「余計なお世話」などと思って、聞く耳を持たなくなります。何回も叱るのを避けようとして「そういえばあのときの……」と追加したり、「ここが悪いから、あれも悪いんだ」などと話をすり替えたりすれば、相手はますます話を聞かなくなってしまいます。

また、自分の考えを一方的に話すのではなく、必ず相手の言い分を聞くようにしてください。叱る前の段階でアドバイスや注意をしたにもかかわらず、それが改善されないということは、何か理由があるのかもしれません。まず改善してほしい点を伝えた後で、相手の言い分を徹底的に吐き出させるのです。それに対して、一つ一つ反論してはいけません。叱るのは、相手を論破してねじ伏せるためではなく、改めさせることが目的なのです。

最後は、叱らなければいけない以上、改めてほしい点を明確に伝えることです。相手に配慮するあまり、及び腰になって回りくどい言い方をしてしまうと伝わるものも、伝わらなくなります。叱るときは、まず毅然とした態度で、冷静に改めてほしい点を伝えます。そして、相手の言い分をしっかりと聞いた上で、どうすれば改善できるのか一緒に考えようとする姿勢が、叱る効果を最大限に高めるのです。

PROFILE

永田 豊志
秋田 義一あきた・よしかず
一般社団法人話力総合研究所理事長。話し方、聴き方、ビジネスコミュニケーション、人間関係等に関する研修や講演を担当。また、話力インストラクターの教育指導にあたる。国士舘大学理工学部講師(非常勤)、産業能率大学マネジメントスクール講師。霞が関ナレッジスクェアアドバイザリメンバ。公益社団法人 日本技術士会 防災支援委員会 委員 兼 千葉県支部幹事。千葉県東葛テクノプラザ技術相談員などを歴任。

記事公開:2018年12月