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図解で思考整理

ビジネスマンが抱える悩みを、「図」にすることで解決します。

vol.14 仕事をシェアする前に済ませたい
「業務プロセスの図解化」。

無駄な残業とお別れ

個人の自助努力のみに頼り業務を回そうという時代が、本格的に終わろうとしています。

生産人口が頭打ちとなり、AI、IoT、ブロックチェーンといった「第4次産業革命」を担う技術が実用化されはじめた中で、今後あらゆる業種で生産性を高めるための業務の見直しが進んでいくでしょう。

キーワードは「仕事のシェアリング」。あなたが最も得意な業務に集中するため、事務仕事はRPA※1に任せたり、苦手な部分は思い切って他者の力を借りたりする機会も増えるでしょう。

何をどのように人に頼めば生産性が上がるのか? これを知るためには客観的に業務の全体像を見つめ、抱える仕事、任せる仕事を仕分ける必要が出てきます。その時に役に立つのが、今回紹介するフレームワーク※2「SIPOCダイアグラム」です。

※1RPA…Robotic Process Automationの頭文字。パソコン上で行う業務をコンピュータープログラムで自動化すること。単一のソフトだけでなく、複数のソフトを用いる作業も自動化できる。グラフ作成アプリで業務データのグラフを作り、それをメーリングソフトで関係者に一斉送信などといった一連の業務の自動化も可能。
※2フレームワーク・・・経営戦略の立案や業務改善といった、さまざまなビジネス局面において、課題解決や現状分析をするための思考方法。思考の枠組み。

現在の業務プロセスを正確に把握する

「SIPOC」とは、モノやサービスといった価値を顧客に提供するビジネスにおける、生産から販売・提供までのプロセスの中の、「5つの重要な要素」の頭文字をまとめた言葉です。

「S」はSupplier(サプライヤー/供給元)、「I」はInput(インプット/仕入れるモノ)、「P」はProcess(プロセス/顧客と接触し販売する一連の過程)、「O」はOutput(アウトプット/申込書、契約書などの必要書類)、「C」はCustomer(カスタマー/顧客)をそれぞれ指します。

この5つの要素を「SIPOCダイアグラム」として具体的に書き出すことで、業務に誰が、どのように関わっているのかが分かります。書き出す際は、関係者を網羅し、どんな小さい仕事も見逃さないようにするのがコツです。特に「プロセス」は、別のダイアグラムを書くつもりで細かく書いていきます。

SIPOCダイアグラムの意味

スマートフォンの販売をSIPOCダイアグラムで図解化

スマートフォンの販売業務を例に見ていきます。「サプライヤー」は、スマートフォンのメーカー、キャリアだけではありません。周辺機器のメーカーも含まれます。より広義に考えると、アプリを開発するソフトウェアメーカーをここに入れても良いはずです。するとベンチャー企業と積極的に組む選択肢が視野に入ってきます。このように意外なビジネスパートナーが発見できるかもしれません。

そして次の「インプット」は、サプライヤーから得られるモノです。
さらにその次の「プロセス」は、購入したい人が来店してから契約を交わし、商品を受け取るまでの一連の流れです。スマートフォンの販売の現場では、通常は一連の流れを文字どおりマンツーマンで行います。お客さまとの信頼関係は作りやすいですが、その分時間がかかります。そこでたとえば今後は、契約の一部や機種選定を行うためのプログラムを作り、顧客にタブレットを操作して自ら契約手続きをしてもらうというプロセス改善ができるかもしれません。このように、一連のプロセスを細分化して明示することにより、ある部分を自動化したり、アウトソーシングしたりする可能性を見つけられます。
「アウトプット」の部分は、これまで紙の契約書が主流でしたが、電子化によってペーパーレスにできそうです。

SIPOCダイアグラムの例(スマートフォン販売)

このように「SIPOCダイアグラム」には、日常の業務を再確認し、特に疑問を持たなかったことや、慣習となっていたことをあぶり出す効果があります。それを客観的に見つめることで、「自分の業務」「自動化できそうなところ」「部下や他者に任せられそうなところ」を仕分けして探してみてください。

PROFILE

永田 豊志
永田 豊志ながた・とよし
知的生産研究家、ショーケース・ティービー共同創業者兼取締役副社長。九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。その後、出版社や版権管理会社などを経て、ショーケース・ティービーを共同設立。図解思考、フレームワーク分析などビジネスパーソンの知的生産性研究にも取り組んでおり、国内外で執筆活動や講演でそのノウハウ普及を行う。

記事公開:2018年6月