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図解で思考整理

ビジネスマンが抱える悩みを、「図」にすることで解決します。

vol.19 従業員の満足度を高め、顧客満足度の向上につなげる。
サービスプロフィットチェーン。

従業員、顧客、企業の好ましい関係性を示すモデル

少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、仕事と育児・介護の両立を必要とする人の増加、そして働き方ニーズの多様化などを受けて、個々の事情に応じた多様な働き方を推奨する「働き方改革」が話題になっています。
では、働き方改革で従業員満足度が高まると、会社はどうなるのでしょうか?
その答えのひとつとなるのが、会社の内外における好循環を生み出すためのモデル、サービスプロフィットチェーン(SPC:Service Profit Chain)です。

従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)が高まれば、従業員は質の高いサービスを顧客に対して提供するようになる。それが顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)の向上を生んで、顧客の利用回数の増大や新規顧客の獲得といった企業利益の高まりにつながる。これがSPCです。

サービスプロフィットチェーンの2分類

SPCは、顧客満足を高めるための「外部サービスのSPC」と、従業員満足を高めるための「内部サービスのSPC」の2種類に分類されます。

【外部サービスのSPC】

  1. 外部に対するサービス価値が向上すると、顧客満足度も向上し、顧客のロイヤルティ(愛着心、親密性)が高まる。
  2. ロイヤルティの高い顧客による継続的利用や、他の顧客に対する口コミ効果で新規顧客が増えることで企業利益が拡大。

【内部サービスのSPC】

  1. 仕事環境・評価制度・教育制度など社内サービスの改善・充実を図り、外部サービスで得られた利益を従業員に還元する。
  2. 上記の取り組みが従業員の満足度を高め、会社と事業へのロイヤルティを形成。
  3. ロイヤルティの高まった従業員のモチベーションがアップし、生産性が向上。外部(顧客など)へ提供する価値も向上する。

サービスプロフィットチェーンの基本構造

従業員満足度と顧客満足度を両方高めて、Win-Win状態をつくる

SPCによって、社内外に好循環を作り出すには、ESとCSの双方を高め、Win-Winの状態にすることが重要です。例えば、CS向上と企業利益を優先してコスト削減をやりすぎれば、ESは次第に下がり、最終的には利益にも悪影響を及ぼしかねません。

長期的な収益力のある組織づくりには、まずESの向上に取り組むべきで、従業員のモチベーションを高める環境整備がカギとなります。その際、高い報酬はESを向上させるためのひとつの要因となり得ますが、それだけで従業員のモチベーションを恒常的に高く保たせるのは難しいと心得ておきたいものです。人の脳における報酬系の働きから考えて、仕事の面白さや働きやすさ、といったもののほうが、会社への長期的なロイヤルティにつながる効果があります。

また、従業員ひとりひとりの継続的な努力と順調な成長にもかかわらず、何らかの要因で、仕事の規模が小さくなる、成果に対する報酬が見合わなくなる、人事評価制度が一変してしまう、といったケースが生じると、仕事に対するモチベーションはあっさりと低下してしまうものです。そうなると、それまで少しずつ積み上げてきた従業員のロイヤルティが一気に失われかねません。
そうならないためにも、会社として定期的にESの維持、向上を図る取り組みは、とても重要といえます。

従業員の評価に関する公平性の確立、スキルアップや将来設計に対してのフォローといった環境整備に力を入れ、利益を社内サービスに還元していく取り組みこそ、顧客満足度向上と企業利益の増大につながるのだ、という意識をもちましょう。

PROFILE

永田 豊志
永田 豊志ながた・とよし
知的生産研究家、ショーケース・ティービー代表取締役社長。九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。その後、出版社や版権管理会社などを経て、ショーケース・ティービーを共同設立。図解思考、フレームワーク分析などビジネスパーソンの知的生産性研究にも取り組んでおり、国内外での執筆活動や講演でそのノウハウ普及を行う。

記事公開:2019年2月