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What's this?

不要な「光」だけ
チョキチョキカット。
写真の色褪せ防止技術が
生んだ不思議な素材とは?

紫外線、と言えばお肌の天敵。
しかし、紫外線がマイナスの影響を及ぼすのは、
肌に対してだけではありません。
富士フイルムでは紫外線をカットしつつ、
可視光線はできるだけカットしない
産業用の紫外線吸収剤を開発。
その背景にあるのは
「写真の美しい色合いを損なうことなく、
紫外線だけをカットしたい」という
銀塩写真時代の研究成果でした。

見た目も美しく、紫外線もカットする。
その難題に挑んだのがコトの始まり。

太陽が、私たちの目に見える「可視光線」以外にもさまざまな波長を持った光を出していることはご存知かと思います。もっともよく知られているのが赤外線と紫外線。簡単に説明すると、赤外線は可視光線より波長が長い光で、赤外線ストーブをはじめ「熱」を及ぼす作用を持っています。一方、可視光よりも波長が短い領域の光が紫外線です。紫外線は化学的エネルギーがとても強く、日焼けなどを引き起こす原因であることが広く知られています。
紫外線の影響を受けるのは、人間だけではありません。直射日光に当たる場所に置いておいた家具は色褪せしてしまいますよね。その原因の一つが紫外線です。この色褪せの防止こそが、富士フイルムが長年向き合ってきた課題でした。「どうすれば現像した銀塩写真を美しく保てるのだろうか?」フイルムメーカーとして克服すべき課題に対して出した答えの一つが、銀塩写真に照射された紫外線をカットする添加剤の開発でした。ここで大切なことは、目に見える可視光線はできるだけカットしないこと。なぜなら、可視光線までカットしてしまうと、銀塩写真の色味が悪くなってしまうからです。「紫外線のカット」と「見た目の美しさ」。両立が難しいこの課題に挑戦し続けた結果、富士フイルムは、ある特定の波長の光だけをカットし、それ以外は透過させるという独自の技術の開発に成功しました。

低着色を保つため、
特定の不要な波長だけカット。

この写真の色褪せ防止技術を応用して生まれた紫外線吸収剤。富士フイルムの製品が対象としている光の波長を少し詳しく分類すると、衣料品や紙などの変色や劣化を引き起こす320~400ナノメートルの波長の紫外線があり、これは一般的に「UVA(ユーブイエー)」と呼ばれています。UVAの中でも人間の肌の奥まで到達してハリの低下やしわを引き起こす370~400ナノメートルの紫外線を富士フイルムは、「Deep UVA」と呼んで区別しています。
さらに「HEV(高エネルギー可視光線)と呼ばれる400〜420ナノメートルの可視光線や、「ブルーライト」と呼ばれる380~500ナノメートルの紫外線~可視光線は、人の眼や身体にとって負担になるのではないかと言われており、近年注目を集めている領域です。
ここで銀塩写真時代に培った技術、すなわち特定の波長だけにフォーカスしてカットする技術が発揮されます。つまり、富士フイルムでは先ほどの領域それぞれに特化し、各々の周辺の光だけカットする紫外線吸収剤が製造できるのです。
それを表したのが下のグラフです。たとえばDeep UVAをカットするのが得意な紫外線吸収剤「FUV-002B」は、400ナノメートル以下の紫外線はすべてカットしていますが、そこから先は透過率が急激に上がり、色味に影響する420ナノメートル以上では90%以上の光を透過しています。つまり、Deep UVAはカットしても人間の目に見える光はしっかりと通しているため、結果的にこの紫外線吸収剤を練りこんだ対象物は、低着色を保ったまま製品化することができるのです。
特定の不要な波長だけカットするという技術に加え、富士フイルムの紫外線吸収剤には、長期にわたり紫外線カット機能が期待できる耐光性をはじめ、エンプラ等に練りこむ際に高熱に溶かしても劣化しない耐熱性、不純物の少ない高純度などの特性があります。

【主な製品の透過率を示したグラフ】

目的、用途をヒアリングして
最適な添加方法をご提案。

富士フイルムが紫外線吸収剤を市場に提供し始めたのは、2009年頃のこと。銀塩写真で培った技術をより多くのお客さまに提供したいという想いがカタチとなり、着実に市場を拡大しています。その市場は、ディスプレイから出る紫外線から精密機器を守りたいというニーズがあるディスプレイ分野をはじめ、ブルーライトをカットしつつ、着色を抑えたいという眼鏡レンズ分野まで、実に多彩です。
お客さまからご評価いただいているのは、高機能な製品だけではありません。素材自体に紫外線吸収剤を練りこむ方が良いのか、あるいは素材の上に紫外線吸収剤をコーティングした方が良いのか。扱う素材や使用用途をお聞きして最適な方法を提案、あるいは富士フイルムの他の製品を紹介するなど、モノありきではなく、お客さまのニーズありきの姿勢が少しずつ信頼の獲得につながっているのです。
富士フイルムの今後のビジョン、それは「特定の不要な波長だけをカットする」にこだわり続け、紫外線以外の領域にも挑戦すること。今後医療と光学が発達すれば、可視光線でも人体に影響を及ぼす領域の光が発見されるかもしれません。その部分だけをカットできる吸収剤を開発できれば、多くの人々がより健康的な生活を送れるようになるのです。
光をカットする―――。銀塩写真技術で培った技術は、未来の産業、医療に大きく貢献していくのです。

紫外線カット剤(UV吸収剤)に関する情報はこちら

【使用分野のイメージ】

【取材協力/富士フイルム株式会社 産業機材事業部】

記事公開:2017年11月
情報は公開時点のものです