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今年4月、創設メンバーのひとりとして活動した大阪のデザイン会社「graf」を退社した家具職人の荒西浩人さんは、奥さん、佐和子さんと二人のお子さんの4人で兵庫県篠山市に拠点を移し、新たな道をスタートさせました。これまで以上に「自分の手でつくる」を生活のまんなかに据えていく。そう語る荒西夫妻の写真を楽しむスタイルは? 引っ越したばかりで、今も日々着々と改装中のお宅兼アトリエを尋ね、お話を伺いました。
取材・文 高木さおりRe:S 撮影 濱田英明Re:S
手作りのアルバム

荒西浩人(以下、浩人)これがうちのアルバム。全部、嫁が作ったもんです。嫁は僕が現場で使う工具入れなんかも革で作ってくれるんやけど、このアルバムも自分で革をカットして作ったんやっけ?

荒西佐和子(以下、佐和子)そうそう、これは手で革をカットして。これね、表紙を革にして台紙の束を巻いているんですけど、今後もっともっとページを増やしていって、ちょうど裏表紙の革をぴったり前まで巻けるようになったらボタンとか金具とかをつけて閉じようかな?って思ってるんですよ。まだまだ増やせそうですから、最終的にはけっこう分厚くなりますね。

浩人:そうやな。

佐和子:ここには、デジカメで撮った写真を定期的にプリントして貼っていて。もっとこまめに、一ヶ月ごととかでちゃんとやっていこうかな、とか思うけど、なかなか(笑)。気づけば数ヶ月経ってて、まとめてプリントして作ることが多いです。

浩人:とはいえ、やっぱりプリントしておくことがなにより大事で。嫁のママ友達で、3人くらいパソコンが壊れたりして、写真データがなくなってしてしまったっていう人が……おったやろ?

佐和子:そうそうそう。それにやっぱりデジカメで撮っていくとデータがどんどんたまってすごい量になるから、ピックアップしておかないと。それに、パソコンに写真を入れっぱなしにしてたら、いざみんなで写真を見ようかっていうときに、パソコン開いて見ないといけない……それはちょっと違うなって。だから、やっぱりアルバムを作りたいなと。で、そう思ったときに市販のアルバムに気に入ったものが無かったので、じゃあ自分で作ろうと。ただ、今また、だいぶデータがたまってきたので、そろそろ作らないと(笑)。

浩人:僕はね、こういう細かい作業が苦手で(笑)。写真自体は僕も撮るんですけど、アルバムに関しては嫁が全部やってくれてます。デジカメになってからってみんな結構写真を撮りまくってるやろ? でも、うちはあんまりそうじゃなくて、旅行だったり、親戚がたくさんあつまったりとか、特別なイベントがあったりするときだけ撮るっていうスタイル。そうじゃないと消化しきれないですからね。あと、僕ってそもそもは写真でのこそうっていう気がなかったんですよ。過去は過去だって。だから、今まだしも写真で撮ろうという気になったりするのって、やっぱり子どもができたからこそ、ですよね。こうやってgrafを辞め都会からも離れたのもモノづくりの事をもう一度考えたかったのと子どものそばで仕事がしたかったという思いがあったからですし。

佐和子:そうやな。

浩人:あとね、そもそもの話やけど、デジタルに頼るっていうこと自体、いいところはいいけど、それだけになってしまうのは、ちゃうじゃないですか。もちろんデジタルは否定しない。でも、ちゃんと写真をプリントしてモノとしてのこすっていう部分もないと。バランスですよね。バランスっていうのはね、写真にとどまらず、もう生き方全体として言える事だと思います。

端材でつくる額

浩人:嫁はアルバムを。で、僕は額を作って、そこに写真を入れて飾ってます。例えば、これには去年のいとう写真館で撮った写真を入れてるんかな。額を作るときって、ちゃんとボンド入れて色塗って……ってやったら乾かす時間を含めて1日仕事になるけど、この額は、30分とか1時間でできたもの。適当ですよ、適当(笑)。こういうのはね、grafで家具つくってたときに出た端材、そのへんに余ってるやつでさっと作ってたんです。

佐和子:この写真は、前の家の階段上がったとこ、みんながよく見えるところに飾ってたな? 私がつくるアルバムもね、表紙の革は、なんでか家にあった切れ端を使ってて、中の台紙にしてる紙も、家にあった、描かずに余っていた大量のスケッチブックを、全部破いて折って使っていて。

浩人:僕自身、grafにおるときはお客さんの仕事が忙しくてなかなかこういうこともできひんかったけど、例えば今回の引っ越しもそうで、自分で扉作ったり壁抜いたりしてて……とにかくなんでも「自分でやる」っちゅうことをもう一回見直したいな?って思って。そのことは、今grafで働いてる若いスタッフにも伝えたいなって思うし、世の中にも伝えたい。

ここの古民家って以前は小さな宿で、もっと昔は武家屋敷だったみたいなんですけど、今回僕が改装に使ってる材料って、もうほとんどが入ったときからここに置いてあったものなんですよ。木材から断熱材からベニヤからコンパネからボードまで。だから、できるだけそれを使ってみようと思って始めたんですけど、もう今は逆に意地になって(笑)、材料買わずにどこまでやれるか挑戦してやろうと思って。ここにあるもの以外に人がくれたりもするんで、それも利用させてもらいながらね。ふつうこうやって家を改装するときは、数百万?1千万単位でお金かけたりするものだったりするんですけど、僕はまだ数万しかかかってへんのですよ(笑)。おもいっきりお金かけて作り替えるっていう選択肢もあるんかもしれないけど、僕はあったものをうまく生かしながらデザインしていくっていうふうにしたいんですよ。

自分の手を動かしてみる

昔の人はね、みんななんでも自分で、もの作ってたと思うんです。竹馬とか遊び道具とかもね。まあ、もちろん僕だって買うものもあるんですけど、作れるもんは作ったらええんちゃうかな?って。世の中にモノが溢れすぎてるからか、「それ、やったらできるやろ!?」みたいなことをやってみないことって多いと思うんですよ。今回こうやって自分で改装してることを、よく「すごいな?」って言われるんやけど、いや、そうじゃなくて、とにかくやったらええやんって。もちろん僕は家具職人だから、ふつうの人よりも上手にできるかもしれない。でも僕が言いたいのはそういうことじゃなくて、やるっていうこと、作るっていうこと自体の問題で。アルバムもね、既製品のアルバムに好みのものがなかった、じゃあ、自分で作ってみたらいい。だから作った。そういうこと。

佐和子:そうやな。

浩人:もちろん僕だって、たとえば風呂でつけるシャワーヘッドとか、そんなんは買ったらええじゃないですか(笑)。しかも、省エネできるとかいうし……あと、パソコンのメールだって、携帯電話だって便利。使えるものは使って、でもすべてそればっかりに託してしまわんでもええんちゃうか? って思うんですよ。写真自体だって写真館でちゃんとフィルムでのこしていくものもあれば、こうやってデジカメで日々を撮るのもある。はやりだからってそればかりになるのも、いいことだからといってストイックにそればっかりしているのも、どっちもおかしい。やっぱり、要はバランスなんだと思ってます。

荒西浩人(あらにしひろと)
1970年生まれ。家具職人・活動家。本業の家具づくりの傍ら、身近な素材や廃材を利用したモノ作りワークショップも開催。ほか、音楽の分野でもバンド「pug27」でドラムを担当。今年4月末、創設者のひとりとして13年在籍した「graf」を退社。現在は兵庫県篠山市に拠点を移し、8月オープン予定の木工と暮しのお店「ロク」を準備中。
http://itibiri-oyakata.seesaa.net/?1286031225

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