取材・文 高木さおり(Re:S) 撮影 濱田英明(Re:S)
今、僕は改めて写ルンですにはまっているんです。もともと写ルンですをたくさん使ってたのは中学、高校の頃だから今、リバイバルですね。きっかけは、僕らの「ニューレコード」ってアルバム。これにアナログレコーディングの手法を取り入れているんですが、やっぱり、古き良き物っていうのはいいなぁと。音をテープに刻んでいくのと、目に映るものをフィルムに刻んでいくのと、なんか同じだなと思って。デジタルカメラが主流になっていることとMP3プレイヤーとかが主流になっていたりするのってすごく似てるなと。忘れ去られていってはいけないものの良さを、もう一回ちゃんと伝えたいなと思うんです。だから写ルンですをツアーで販売したらどうかって思いついて。
ー どうやって販売されたんですか?
それが、既に3枚くらい撮影された写ルンですなんですよ。メンバーに何十個と渡して、それぞれが好きなタイミングで撮った3枚が写ってるという。あとは僕が絵を描いたアルバムと、使用済みフィルムをリサイクルしたキーホルダーの3点セットで。
僕らが実際に撮影するので、どうしても数に限りが出てきてしまうので数量限定で。そうしたら、ほとんどの会場で完売しました。
ー ですよね。ファンにとっては絶対嬉しいグッズです。
撮り終わって現像すると、僕らの写真が、生写真が写ってる。何が写ってるかは、僕らもわからない。写ルンですって、けっこうフラッシュをちゃんと焚かないと撮れなかったりするからもしかして暗すぎる写真なんかもあるんですけど、でも、今の写ルンですって昔と全然違うなと思って。やっぱり性能が上がってるというか、より写ルンです、もっと写ルンです、って感じ。
ー そもそもそのグッズを思いつかれたきっかけは?
その頃、ちょうど写ルンですをいくつかもらって、久しぶりに使ってみたんです。メンバーが写ルンですを1個ずつ持ってツアーを記録してみた。それで「やっぱ、これいいなぁ」と。で、「じゃあ、これをグッズにしちゃおうよ」ということになって。お客さんの声を聞いてみても、フラッシュ焚いた瞬間とかに「懐かしい」って皆言うんですね。ジッジッというフィルムを巻く音とか、やっぱり皆一度は体験してるんですよ。そして、久しぶりに写真屋さんに持ってって現像してみたら、やっぱりすごくよかったって。
写ルンですって本当に手軽に手に入るし、まあ現像に出すっていうのが、若干みんな、やっぱりデジカメと比べて一手間かかるから敬遠しがちなんですけれど、でもそこが良さだと思ってくれたら。インターネットでポチポチってダウンロードして音楽を聞くのとは違う、CD屋さんにCDを買いに行って、持って帰ってきて封を開けて、CDプレーヤーに入れて聞くっていう作業って、現像と同じだと思う。なんか似ている部分があって。その一手間がいいというか、そこに良さがある。
もしかして、ファンの方の中には、初めてフィルムカメラを使ったのが、このグッズだったっていう人もいたりするかもしれませんね。使い方わかんないって言ってる人、いましたもん。
ー ほんとですか?
フラッシュの焚き方がわからないって。だから、そこを上に上げるんだよと。そうすると、キュイーーーンって言うから、でランプがついたら撮ればいいんだよって教えてあげたんですよ。
ー ずっと写真がお好きだったのですか?
大学の頃から、ずっとコンパクトのフィルムカメラが好きで使ってて、作品というより単純に日常の記録として撮ってました。最初に使ってたのは、昔どこの家でも使ってたようなシンプルな黒いカメラです。母親にもらって。フィルムに関しては、単純にフィルムでありさえすればよかったから、銘柄のこだわりなく、スーパーでパックになっていっぱい入って売ってるのが常に家にもあったから、それを使ってたという感じです。で、撮ったフィルムは同時プリントを出して、そのまま一緒に付いてくるアルバムに入れて友達に見せたりしていました。
ー なるほど。
それで、大学出てから、NATURAと出会いまして。雑誌見てたら、たまたまNATURAの広告が載っていて。それで撮ったという写真が載ってたんですけど、それを見て「僕もこんなふうに撮りたかったなぁ」と思ったんですよ。なんか今までは、どのカメラで撮っても、「なんか、見てたのと違うなぁ」という感じで、いつもあがってきた写真みて、ちょっとガッカリしてたんですけど。しかも、ちょうど前から使ってたのが壊れたところだったで、次のカメラを探してたから、すぐに手に入れて。で、最初に現像した時、衝撃を受けました。「これだ!」と思った。で、そのNATURAがこれなんです。
年季入ってるでしょ? でも壊れちゃったから今はNATURA CLASSICAを使ってます。でも、本当にあらためて、NATURAと出会った時は、もう最高で。今までより、さらにカメラを持ち歩くようになって、写真もいっぱい撮るようになりましたね。あと、僕けっこう周りに宣伝したから僕の効果でいろんな人が買いましたよ(笑)。撮った写真とか見せて、こういうふうに撮れるんだよって言って。
ー ちなみにプリントはどうされているんですか。
全然こだわりがないので、僕はもう普通に家の近所の現像してくれる所に持ってって、1時間ぐらいブラブラして受け取って。それであがったものはアルバムに入れて保存してます。僕、アルバムを作るの好きなんですよね。レコーディングで言うと、CDアルバムに入れる曲の曲順を考える時のようなもので。この写真の隣に何を入れようかとか。まず縦と横があるじゃないですか。それを縦と横で、まず分けるんです。縦は縦で入れていくんです。ああ、こっちじゃなくて、こうだなとか。なんかこう、順番に並べてみたりとか。その作業がすごい好きだからそれはちゃんと家に帰ってから、コーヒーでも淹れてやるんですよ。
ー すごく素敵な時間です。
アルバム本体は、どんなものでも良いんです。ただ連続して並んだ時に、違う表情が見えてくるっていう、それが好きで。あと最初と最後の1枚。なんか36枚撮りだったら、アルバムに入れる最初と最後は、なんか意味をちょっと持たせるような。パッとそれを開いた時に、そのフィルムがどんな時のフィルムなんだかわかるような1枚目に持ってきたりとか。そういうのをすごい考えて。なので、このアルバムに入れて欲しくて、なんかアルバムをセットに付けた。ちなみに、これ。
平間さんにこのグッズをプレゼントしたんですよ。そしたら平間さんが僕を撮ってくれたんです。渡したら、本当に水を得た魚のように、急に撮り始めて。で、指示するんですよ、「ちょっとそこに、だいすけ寝ころんで」って言われて、バッと撮って。
ー さすがですね。
あと、メンバーがツアー中に写ルンですで撮った写真はこうやってエントランスに飾って、来た人が見れるようにしました。
ー きっとお客さん皆さん、ファインダーを覗くって行為も久しぶりでしょうね。
そうなんですよ。写ルンですって一眼レフじゃないから、こう覗いている画と、写真に写る画が若干違うじゃないですか。あんまりドンピシャでファインダーに合わせると被写体が画からはみ出ちゃうから、ちょっとずらした方が良かったり。その思い通りにならない感じ、そういうのも含めて本当に写ルンですっておもしろいと思うんですよね。
D.W.ニコルズのフロントマン(Vo&Ag)。メンバーは千葉真奈美(Ba&Cho)、鈴木健太(Eg&Cho)、岡田梨沙(Drs&Cho)の4人編成。バンド名は「自然を愛する」という理由から、DW=“だいすけわたなべ”が命名(C.W.ニコル氏公認)。09年9月9日に『マイライフストーリー』でメジャーデビュー、11年1月26日にアルバム『ニューレコード』を発表。11月には、初の全国ワンマンツアー「それいけ!ワンマンマンツアー」が控えている。http://www.dwnicols.com/