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柳家ほたる

落語家

落語家協会所属の落語家で二ツ目。
1976年生まれ、東京都出身。2004年、柳家権太楼に入門。前座名柳家ごん坊、2008年3月、二ツ目昇進、柳家ほたるに改名。2008年4月~2011年3月までNHKラジオ「日曜バラエティー」にレギュラー出演。
趣味は妖怪探し、ギター弾き、THE ALFEEを聴く、ライブに行く、あてもなく歩く、カメラ。

柳家ほたる Blog: http://yaplog.jp/bakehotaru

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柳家ほたるさんが出演する寄席

□11月上席 浅草演芸ホール 
昼の部 11時45分上がり(11月8・9・10日)

□11月中席 池袋演芸場 
昼の部 12時30分上がり(11月13・14・15日)

□11月下席 鈴本演芸場 
夜の部 17時30分上がり(11月21・23日)

前座時代を経たあとで始めた写真。今では肌身離さずカメラを持ち歩くほど。

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─ ほたるさんのブログを見ていると、楽屋などでの芸人さんの写真がすごくいきいきして、和気あいあいとした様子が伝わってきます(2011年7月2010年12月)。ブログは長いことやっているのですか?

ブログを始めたのは二ツ目になってから。前座時代は修業ですからねぇ。いろいろなものを吸収する時期だから、自分の意見を言ってはいけない、持ってはいけない。だけど、個性はだせって、意味がわからないでしょ?(笑) でも、前座のあいだはそんなもんです。なにより忙しい。毎朝9時に師匠の家に行って、昼席があったらそのまま寄席に行くでしょ。寄席で働いて、夕方5時に終わって、そのあとが自分の時間で落語の稽古をします。着物をたたむのだって最初はできないし、太鼓の稽古もしないといけないし。

─ それが二ツ目になると急に自分の時間ができた。

そう。前座時代は365日、ほとんど自分の時間はかったのに、二ツ目になると時間がありすぎるくらいある。それに、二ツ目になると、仕事を個人でとってこなきゃいけないんで、ブログを始めたんです。それが3年くらいまえのこと。
ただ、文章能力があるわけじゃないから、「今日、恐竜展に行った。楽しかった。また行きたい」って小学生の作文みたいになっちゃうからつまらないでしょう。写真があれば楽しいかなと思って、立ち読みで本を読んで、写真のやりかたを覚えていって、気づいたら、いつでもカメラを持ち歩くようになりました。

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人からほめられて、「いい写真」っていうものがあるんだなぁと、意識するようになりました。

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─ 今日の取材を上野にある国立科学博物館でやることになったのも、ほたるさんが好きな場所だから。上野にはよく来るのですか?

稽古するときは歩きながら覚えるんです。上野公園ってぶつぶつ言いながら歩ってても職質されないでしょ?(笑) それに緑が気持ちいいから、しょっちゅう来ています。わたしの場合、まず噺を習ったら、録音したものをパソコンで起こして、家とか電車のなかである程度覚えてストーリーが入ったあと、歩いて稽古しているんで。

うちの一門は、1日、11日、21日は師匠の家に集まるんですけど、それ以外はなにをしていてもいいんです。前座から、今の二つ目になっていちばんうれしかったのは、目覚ましをかけないで寝られる、遅刻しちゃいけないってプレッシャーもないから夜更かしもできる。時間があるんですよ。でも、お金はあまりないから、上野をぶらぶらしながら稽古して歩いて、ちょっと休憩しようというときに科学博物館へ入る。フリーパスが年間1000円のうえ、ニホンオオカミの剝製とかぐっとくるものがいっぱいあるから、写真を撮って楽しんでいます。
そして、おみやげものコーナーでポストカードを見ては、「おー、自分が撮った写真の構図は正しかったんだ」って、答え合わせをしています(笑)

─ 写真をほめられたこともあったとか。

そう。あれは桜の写真でした。ブログ上で「いい写真ですね」ってほめてもらったんです。そのとき、はじめて「いい写真」っていうものがあるんだって気づいたんです。正直、「いい写真」って、なにが良くて「いい写真」なのかは、まだよくわからないんですけど、普段からいいなと思った写真があったら、「こんなのが撮れるといいな」と意識して、構図を真似たりしながら撮るようになりました。

─ 落語の学び方に似ていますね。写真を見せることで、人に喜んでもらいたいという点でも、すごく近い部分がある気がします。

なるほど、そう考えると、落語も写真も共通点があるかもしれないですね。落語は、始めは真似でいい。だけど、ずっとコピーをやってたんじゃ意味がなくて、オリジナルをだしていかないといけない。ただ、わたしの場合、普通にやっていてもうまくコピーができないから、どうしても自分流になってしまうんですけどね……(笑) 落語も写真も、人に見せていくのが伸びるコツですよね。客の反応って重要です。ほめられてこそ伸びるので。

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写真は自分と相手との距離感がでる。

─ さて、そろそろ、この200枚のなかから一枚の写真を選びましょうか。

どうしようかな。やっぱり、「たこ焼き」の写真かなぁ。この写真は柳家権太楼一門を象徴する感じなんですよ。わたしは三人家族だから、大勢で食べるのがすごく楽しいんですよ。師匠、おかみさん、弟子6人、師匠の家族と一緒にね。

悩んだりするじゃないですか、そういうときも兄弟子に相談できるし、真剣な相談なんですけど、たこ焼きを食べながらだから軽くなる。
「このまま上野ばかり行っていていいんだろうか」って言うと、兄弟子が「おれも二つ目になったときは仕事全然なかったよ、来年になったら増えるよ」って言ってもらって安心したり、「こないだこんなことが、あったんですよ」って泣きごとを言ったら、「ああ、たいへんだったねぇ」って返してもらったり。

結局、師匠の家が、自分の家みたいなもの。だからこそ、この「たこ焼き」の写真がいいなぁって思うんですよ。一門の温かさとか思い出が詰まっているから。たこ以外にもね(笑)

─ そういえば、ほたるさんの写真には、柳家権太楼師匠をはじめ、一門のかたがたの写真ってほとんどないんですね。

ほんとだ。わたしはズームを使わず単焦点で人を撮っているから、人との距離が近いの。だから、二ツ目や前座さんだったら、「お前、近いよ」って怒られながらも、寄って撮れる。ほかの一門の師匠でも、楽屋でふたりきりになったときを見計らって「師匠、師匠、ちょっと写真を撮ってもいいですか?」ってお願いして撮らせてもらっています。
でもね、うちの師匠にはできない。正直、師匠にカメラを向けることは恐いんです。一枚だけ海外で撮った写真があるけど全然近づけてない。師匠の娘さんの結婚式で、バージンロードを一緒に歩くところさえ、恐れ多くて撮れなかったんですよ。

やっぱり、写真は自分が近づける距離がでてきますよね。おそらく生涯、師匠にカメラを向けるのは無理かもしれないですね。なんといっても、尊敬する自分の師匠ですから。

【追記】
この取材のあと「いい写真」を撮ることを、より意識した柳家ほたるさんは、なんと、サンシャイン水族館の写真コンテストで入賞したそうです。おめでとうございます!

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2011/7/20 取材・文 岡田カーヤ/構成 MONKEYWORKS
写真 藤堂正寛/Webデザイン 高木二郎

撮影協力 国立科学博物館 http://www.kahaku.go.jp

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