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簡単で便利!お気に入りの写真をデジカメプリントするならフジフイルムネットプリント

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  3. 漫画家 桐木憲一さんインタビュー
写真部の女子高生がクラシックなフィルムカメラ片手に東京のまちをぶらり歩く。『東京シャッターガール』は静かな時が流れる叙情的なストーリーで、今年1月にコミック1巻を発売するや話題を呼んでいる漫画です。その作者、桐木憲一さんの仕事場「紫雲荘」を訪ねました。場所は漫画界の聖地、あの「トキワ荘」があった場所のすぐそば!

読み終えたとき、最近使っていなかったフィルムカメラをひっぱり出して出かけたくなる。撮りためた写真を改めて見返したくなる、そんな漫画『東京シャッターガール』。桐木さん自身は「フィルムカメラはまだまだ初心者なんです」と言いながら、旧式のフィルムカメラを使用。

フィルムカメラとの再会

ー そもそも『東京シャッターガール』を描かれるきっかけは?

はじめは、連載させてもらっている雑誌『週刊漫画ゴラク』の編集長さんから声をかけていただいて「女子高生」と「レトロ」を条件に描いてほしいと言ってもらって。それで、街歩きのがいいのかなっていうことをひとつ思いつきまして。でもそれだけだと、ちょっと面白くないので、カメラを持たせようと。本当に、偶然の思いつきです。

ー もともと写真は、よく撮られてたのですか?

いや、ほんとデジカメを触る程度で、本格的に勉強してたっていうことでは全くなかったんです。ただ、そのデジカメも一眼レフで、だからカメラを嫌いだったわけではなかったんですね。でも、それを持って自分自身が街歩きをしていたというわけでもなく、ただ、持っていて面白いものがあったら撮るという程度で。

ー 漫画の主人公はフィルムカメラを使っていますね。しかも、フィルム時代の後期の完全オートのものではなくて、二眼レフだったりレンジファインダーだったり。

そうですね、ほんとに、一番はじめは何も分からなかったので、主人公は「キエフ」の3型っていうのを使ってるんですけども……デザインで選びました(笑)。とにかく、かっちょいいな、と。

ー そこ大事ですよね(笑)。探しに出かけられたわけですね?

中古のクラシックカメラ屋さんを何軒かまわって。まずなによりも絵にしなければいけないので、絵になるカメラ、デザインを選ぶ必要もあったので。それで「キエフ」を。

ー 購入された「キエフ」は、自分でも撮ってみられましたか?

そうですね。はじめに買ったのはジャンク品でほとんど動かなかったんですけど、最近ちゃんとしたものを買いまして……面白いですね。

ー 一眼レフのデジカメを使われる前に、フィルムカメラを使われたことは?

僕は、学生時代にそれこそ「写ルンです」とか「チェキ」とかがすごい流行した世代で。だから若い頃はよく使ってましたよね。でも、それとはまた別物ですね。ただ、普段使う分には、ほんとに「チェキ」とかすごく楽しいなと思って、今でも欲しいくらいで買おうかなって思ってるところなんですけど。

ー 今はどのフィルムカメラをメインに?

二眼レフの「ローライコード」とか、あとは、これ、雑誌ですすめられているのを見て最近買ったのですが「NATURA CLASSICA」ですね。

僕は「キエフ」とか「ローライコード」とか完全マニュアルのクラシックカメラから入ったので、「NATURA」を使って「すげー使いやすいなー!」って。ほんとに、押すだけ、オートで綺麗な写真が撮れる。フィルムも専用の「NATURA1600」を使ってます。「キエフ」とかになってくると大変なんですよ。僕なんか初心者ですから、まずはデジカメで絞りとか露出を調べて、そこからフィルムカメラをその数値で合わせて、で、やっとシャッターを切る(笑)。撮ったフィルムは、以前取材で出会って、漫画にも登場している「東京写真工芸社」さんにお願いしていて、いつもは現像同時プリントです。でも、ゆくゆくは技術を身につけて自分で焼きたいなという思いもありますよね。

行き当たりばったりのロケハン

ー 漫画には東京の各所が詳しく載っていますね。

やはり描く前には事前にその場所へロケハンに行くんですが、そのときにもカメラを持って。ただ、資料としてどんどん撮るし、そもそもロケハンで見つけた場所の中で、どこを漫画に登場させるかは後から決めるので、どうしてもすごく枚数が多くなってしまって。1ヶ所で2〜300枚は平気で撮る。なので基本的にメインで使うのはデジカメです。で、そのサブとしてフィルムカメラも持っていって、実際の雰囲気を味わったり、そして「ここは!」という場所ではシャッターを切って、フィルムにおさえておきます。

ー 最初に目的地を調べたりして決め込んで行くわけではないのですね。

はい。ほんとに行き当たりばったりです。僕は山口県萩市の出身で東京は土地勘がないので、全然知らない土地ですと、何があるか全く分からない状態ですから、とにかく歩き回って、デジカメでたくさん写真も撮ってっていう感じですね。2、3回足を運ぶこともよくあります。東京って駅ごとに雰囲気が全然違うので面白いんですよ。裏路地とか……あっ、僕、路地の写真集とかも持ってたりするんですけど、そういう道とか、あと高低差、坂道とかがあると、すごく立体感が出てくるので面白いですよね。本郷あたりには結構そういう坂道とかも多くて、歩いていて面白かったですよね。

ー 実際歩く中でそういうことをひとつひとつ知っていく。

そうですね。その場所に、どういった人たちが住んでるのかなっていうのも歩いて知って、そういう人との絡みを入れたりもしてストーリーを作っていきます。

ー 歩き回ってたくさんの情報を拾っていくロケハンでは、デジカメが大活躍ですね。

やっぱり気軽に撮れるのがデジカメのすごくいい点です。フィルムカメラに関しては、例えば24枚しか撮れないっていうと気合いの入り方が違う。たった1枚撮るのでも、構図を考えたりとか、頭使っていろいろ考えたりするので、ファインダーをのぞいても、違うなって思ったらシャッターを切らないとか。デジカメではありえないですよね。とりあえず撮っておこうかなってなりますから。

時間を切り取る「機械」を手にして

フィルムカメラに限らず、デジカメにも言えることだと思うんですけどが、写真によって時間が切り取られていくっていう話、その時間の流れについては、ちょっと描いてみたいなっていう思いがあります。そのときしかない、その「瞬間」っていうのがあると思っていて。それを切り取るのがカメラっていう機械だなって思うんです。それは漫画ではできない表現なので。

ー その時間に対しての想いは、この漫画を描く前から桐木さんの中にあったものなのですか?

結構昔、小学生ぐらいから思ってきたことです。楽しいことがあると、終わった後が、祭りの後じゃないですけど、すごく寂しい。ああ、楽しいときっていうのは「そのとき」だけなんだって。二度と返らない。そうやって時間が経っていくことに寂しい思いを感じてて。例えば街なんかでも、このあたりの界隈もそうなんですけど、この表紙を描く際に本郷の方へ久しぶりに行ったんですけど、やっぱり町並みが変わってまして。特に、表紙に使いたいなと思ってた建物が今は跡形もなく、マンションになっていたりとかしまして。ああ、やっぱりそのときにしか撮れないものがあるんだなっていうのを感じて。

ー 写真と漫画の表現の違いってなんでしょう?

写真は時間を止める表現で、漫画はコマをつなげて時間を流して物語を進めていく、時間と連動した表現。音楽なんかもそうですね。1枚絵やイラストは、時間を止める表現です。ただ、漫画の場合は、表紙に1枚絵を用いたり、またコマの中でも、例えば大友克洋さんの『AKIRA』とか、ものすごく書き込みが多くて、見てるだけで1時間くらいかかりそうだなっていう絵を差し込んだり、そういうものだと止める絵になると思うんです。そして、また、その後のコマで流していったり。漫画の強みは、そうやって自在に時間の緩急をつけられるところだと思っています。例えば映画ですと、時間が1分なら1分で、見ている人の中で等しく時間が流れるけど、漫画は、描く人によって時間を意図的にねじまげられるっていう。

あと、これは今後の展開次第ですが……漫画って、結構主人公が年を取らないことも多いですけども、自分の場合は、主人公が卒業していったりとか、ちゃんと時系列に沿ってストーリーを展開したい。だから3年で卒業して、全然違う人が主人公になってまた新しい時間を紡ぐっていうこともあるのかもしれない。

ー よりリアルに近い漫画を描きたいと?

そうですね。やっぱり時間が経つことで変わっていく街の風景がメインのテーマでもあり、同時に人も年をとって変わっていくっていうことですので。それを描かないと結局なんか意味がないような気がしているんですけどね。

ー 意味がない。

はい。成長していくっていうことかもしれないですし。例えばこれから主人公が写真を選択して本格的にやっていくのが、もしくはあくまでも趣味として続けていくっていう選択をするのか。そういうことも今後展開していくわけです。それは、今後の僕のフィルムカメラとの付き合い方自体がストーリーに影響を与えていくのかもしれません。

ー 今後桐木さんがフィルムカメラと写真を極めていかれる中で、漫画での時間との対峙の仕方が、ご自身の写真表現へ投影されていくことになったりするのではないでしょうか。

そうですね。例えば、僕も持ってるんですが、荒木経惟さんの『センチメンタルな旅』なんて、言葉も入って、物語的なところがありますよね。ああいう表現もまた面白いなと思います。せっかく写真を勉強させていただいたんで、もしかして、これから、絵と言葉に写真を消化して加えた、新たな表現が自分の中に生まれるのかもしれないなって思います。

取材・文 高木さおりRe:S 撮影 藤堂正寛

桐木憲一
1976年山口県出身。漫画家。1991年「ななせ君のバカ」で週刊少年ジャンプ「ホップ☆ステップ賞」入選。現在は週刊漫画ゴラク(㈱日本文芸社・毎週金曜発売)など青年誌を中心に活動。執筆活動のほか、「トキワ荘通り協働プロジェクト」スタッフや、元・赤塚不二夫氏の仕事場があった「紫雲荘」のワークショップ企画スタッフも務めている。「東京シャッターガール1巻」台湾翻訳版も夏頃刊行予定。http://k-cover.blogspot.jp/

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