アポダイゼーションフィルター(APDフィルター)の原理と効果
一般的にレンズの絞りの特性を利用することで、手前から奥までピントを合わせたり、被写体の背景をぼかして際立たせたりすることができるようになります。APDフィルターは、前ボケ・後ボケのどちらも柔らかいボケを生成できるフィルターで、理想的なボケ味を得ることができ、卓越した写真画質と立体感のある表現が可能となります。
ここでは、APDフィルターの効果と、APDフィルターの有無によるボケ味の違いをご紹介します。
APDフィルターの特長とは
APDフィルターとは、中心部の透過率は高く、周辺部に向かって透過率が低くなるフィルターです。自由なグラデーション特性を作ることが出来るので、「フジノンレンズ XF56mmF1.2 R APD」に最適な特性としています。
また、特殊薄膜フィルターの開発によりAPDフィルターを搭載していない「フジノンレンズXF56mmF1.2 R」の寸法を変えることなく、コンパクトで軽量のAPDレンズを提供することを可能としています。
APDフィルターの主な特長
(1)ピントが合った部分の解像度や画質はそのままで、ボケ像の輪郭のみが柔らかくなります。
(2)明るい開放絞りほど、大きな効果が得られます。
(3)APDフィルターにより、画面の周辺光量が減ることはありません。
(4)APDフィルターにより、AE/AWBに対する影響はありません。
(5)APDフィルターの影響で像面位相差AFは使用出来ません。AF動作は自動的にコントラストAFとなります。
APDフィルターの効果
次の図は、APDフィルターの効果を判り易く説明する為に、画面中心で点光源がどのようなボケ像になるかを表した簡易光学図です。実際の写真はこの点光源の集まりと考えて下さい。このボケ像の集合体で描かれる画像がボケ味の決め手となります。
図1 収差のないレンズ
収差のないレンズの場合、ジャスピン位置ではシャープな解像が得られて、ボケ像はほぼ均一な明るさ分布となります。
図2 APDフィルターを搭載したレンズ
図1のレンズにAPDフィルターを挿入しました。ジャスピン位置での解像はそのままで、前後のボケ像の輪郭が柔らかくなっている事がわかります。
図3 球面収差でボケ味を制御するレンズ
球面収差のコントロールで後側のボケ像を柔らかくした例です。大きく柔らかなボケ像が得られる反面、ジャスピンの解像力が低下し、さらに逆側のボケ像は周辺部が明るくエッジが強調されるボケ像になってしまい、2線ボケの要因となってしまいます。
※球面収差とは、レンズ中心部と周辺部を通った光が1点に集まらない現象。
図4 シミュレーションによるボケ画像の比較
図1の像で描かれるボケ画像は、ボケ像同士の干渉があるためやや硬いザワザワしたボケ味になります。そのような場合、ボケ像が平面的に見えてしまいます。これに対して図2のような柔らかいボケ像で描いたボケ画像は干渉が抑えられて、立体感の有るボケ画像になります。
絞り値変化によるAPDフィルター効果比較
下図は、絞り地変化によるAPDフィルターの効果を比較しています。
1. APDフィルターを搭載すると、ボケ像の大きさは若干小さくなります。(下図F1.2、F1.6比較参照)
2. APDフィルターには絞り効果があるため被写界深度は若干深く見えます。(F1.2⇒F1.6相当)
また、絞り効果により同F値で比べた場合は若干解像度はUPします。
※比較画像をクリックすると拡大表示します。 一部端末では拡大時、表示される画像が小さく表示される場合があります。拡大画像はお客さまご自身で任意操作いただくことで拡大表示が可能です。
F4以降では、APDフィルターの効果がわかりづらくなります。
作例
作例比較
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
フジノンレンズ XFシリーズの各種ラインアップは、富士フイルムサービスステーションにてお貸出ししております。
実際にAPDフィルターのボケ味を、お確かめいただけますので、ぜひ、ご利用ください。